激痛との戦い
入院5日目の午後。大学センター試験を受ける為の一時退院の準備、ポータブルドレーンに付け替えの日。
この日は痛みはだいぶひいていたが息苦しさが残っているくらい。
この時はポータブルに付け替えれば身軽になってらくになるかなとどちらかというと前向きな気持ちで気軽に考えていた。
処置室から出てきたのは2時間くらいが経ってから。
病室に自分で歩いて帰ってきたが顔はゆがみ、戦から帰ってきた武士のように斜めになりながらびっこをひいていた。
見ると横腹についていたドレーンは胸の真ん中に穴があけられブラーんとついていた。
ぱなしの様子を見ると笑顔は消え顔をゆがめ、
「い、痛すぎる」と小さい声で言うとすぐにベッドに横になった。
様子を見ていた先生が
「起き上がりにくいと思うので今日は付き添ってもらっていいですよ。」 と言ってくれた。
1時間程だったか沈黙が続いたころ向こうをむいたままぱなしが「もう、、帰っていいで」とかすれた声でいってきた。
「え?今日は泊まるわ」
「いや今日は痛みに耐えるだけやから。」
「でもトイレ行くときとか1人は大変やん。」
「どうしても厳しい時は痛み止め追加してくれるみたいやから」
「でも…」と何度かこのやり取りをした。
寝返りも、うてないような状態で1人おいて帰るのが不安だったけど、後ろ姿で、帰って。と何度も言われたので帰ることにした。
帰り道ぱなしの父と2人、ほとんど話すことなく自宅までたどりついた。
会話をするとお互い涙がでてきてしまうのがわかっていたから話せなかった気がする。
平常心を保つ為に心の中で大丈夫と思うように必死だった。
それでも精神的にぎりぎりの状態だった。
その状態のまま寝ようとした時ぱなしからLINEがはいった。
ぱなしからのLINE
「もうセンター無理かもしれん。」
初めてぱなしの弱気の発言を聞いた。
これまでどんな状況でも弱音をはかない子だった。
あかん。もうぱなしの心が壊れてしまう。
ぎりぎりの精神状態の私はLINEを見て泣き崩れてしまった。
ぱなしの父親も同じだった。
我慢していた涙が蛇口が壊れたように止まらなくなった。
受験なんかしてる場合じゃない。
せめて体の痛みだけは少しでも早くとりのぞかなければ…
「もうやめよう!今年のセンターはあきらめて来年またがんばればいいんじゃない?」
「手術を早めよう。」
と言ったが何も返ってこなかった。
ぱなしから決意のLINE
1時間ほど経った頃
「さっきはあんな感じになってごめん。
一瞬気持ちがブレた
でももう大丈夫。最後までやりきる。」
いつもと変わらないlineの文字のはずが、画面からぱなしの強い決意を感じた。
暗い病室で一人、痛みに耐え不安で押しつぶされそうになりながら乗り越え成長した瞬間だったように思った。
あとはもう精一杯受験を応援するしかなかった。
こうしてぱなしはドレーンをつけたままセンター試験を受ける事になった。
とは言ってもまっすぐ歩く事が難しく何かあればすぐに主治医に連絡するよう言われていて、無理できない状態だったので別室で受験することになった。
体調不良者は事前に申し込めば個室で受講できるというので数日前に受験会場の事務局に申請を済ませた。
こうして不安しかないままセンター試験をむかえる事になった。
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